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ガロンボトルビジネス最前線 【その5】
2007年 おいしい水を求めている消費者

多くの新規参入者が後を絶たないガロンボトルビジネスですが、先発・後発を問わず、他を制するだけの勢いをもつ企業がなかなか現れません。それぞれの企業が、思うように業績を伸ばし切れずに、手詰まり状態に陥っている様が伺えます。この間、岩谷産業・トーエル・いずみやといった有力どころが、パイの拡がりを先取りして設備投資を競い、量産体制を整えました。各社とも工場の近代化を進めたため、製造コストは抑えられつつあります。しかし、皮算用したほどにはパイが広がらないため、顧客の争奪戦が激しさを増す傾向にあるようです。どこも、安売りのために設備を整えたわけではありませんが、誰かが走り出せば追い駆けっこが始まってしまいそうな形勢です。
アクアクララの倒産で多くの人材が方々に散りました。その結果が、よい形でガロンボトルビジネスの活性化を促すだろうという期待と裏腹に、この業界は袋小路にすっぽりはまってしまった感があります。そこで、ガロンボトルビジネスが持つ本来の利点をもう一度おさらいすることを通して、問題点を明らかにしてみようと思います。

【ガロンボトルミネラルウォーターの利点】

1.おいしさ
2.安さ
3.便利
4.届けてくれる

1.「おいしさ」は、日本人がミネラルウォーターに求めているもので、サントリーの市場調査等を通して明らかにされています。アメリカのガロンボトルウォーターでは、各社とも天然水・蒸留水・RO水・フレーバー水・ミネラル添加水(例えばフッ素入り)と品揃えを豊富に持っています。利用者は、価格や好みに応じた水をその中から選ぶことができます。因みにマウンテン・スプリングウォーター(山の天然水)が最上位で、価格も一番高く設定されています。一方、日本では各社とも1商品しかなく、消費者が口にできるのは、ほぼ「RO処理水」か「バナジウム」に限られています。「RO処理水」も「バナジウム」もおいしい水とは言えないのに、それしかないとすれば、顧客はガロンボトルのミネラルウォーターに失望を募らせてしまうでしょう。天然水を扱う地方の独立系では加熱処理が主です。これもおいしいとは言えませんし、地方の独立系では設備的な不備で品質的なレベルも低いのが実情です。大手のミネラルウォーターが精密濾過を施した天然水であるのに、ガロンボトルのミネラルウォーターだけ「おいしさ」に無頓着なのは、なぜでしょう?「おいしさ」を求める日本の消費者と、それに応じようとしないガロンボトルビジネス業界のすれ違いは、今のところ是正される兆しがありません。そして、それがガロンボトルビジネスが伸びないことの最大の原因なのですが、不思議なことに誰もその原因に辿り着きません。

2.「安さ」に関しても、十分とは言えません。重たいガロンボトルのミネラルウォーターは、宅配が絶対条件です。アメリカでは、宅配でありながらペットボトルのミネラルウォーターよりも安い、それがこの商品の最大の利点です。日本では、広範囲の顧客を対象にしなければならない事情で、今まで運送会社を使って全国に宅配する形式が取られていました。但し、宅配を絶対条件としているため、アメリカでは元々地域密着型ビジネスで、製造拠点・販売拠点・配送エリヤの効率を保てる範囲で、各々がビジネスを展開しています。効率と採算性から割り出された価格が、広く消費者に受け入れられているので、利用者数は膨大です。牛乳瓶のように繰り返し使うことができる容器は、その安さを支えるための1アイテムです。アメリカでは、玄関先に空ボトルを出しておくと、その数だけ新しいものを置いていくといった宅配システムを採用しているところもあります。日本と違って、宅配に際してボトルをケースに収めるということもしません。
日本の場合、製造拠点・販売拠点・配送エリヤの効率を保つという点が先行したため、「RO処理水」に行き着いてしまいました。また、「バナジウム」のように、販売代理店にも利益を取らせようという思惑と長距離輸送の必要性から、販売価格は低くできないという事情もあります。また、独立系では小規模工場が多いために機械の導入が遅れ、生産性が乏しいことも「安さ」に辿り着けない要因となっています。

3.「便利」を支えるのは宅配とサーバーですが、サーバーの完成度が日本人が求める質に辿り着いていません。元々アメリカでも、サーバーは水メーカーがメンテナンスを行い、販売促進として顧客にレンタルしています。それが、顧客数が膨大になる過程において、顧客獲得競争の材料として使われた経緯があり、レンタル料を安くするとか無料にするというスタイルが浸透しました。日本の「RO処理水」メーカーも、当初からサーバーはレンタルとしました。RO水のほとんどは、水道水を源水としています。RO水は不純物をミネラルごと取り除いてしまうので、おいしくないし、どれも同じ味になります。そこで、サーバーを無償ないしは廉価に提供しないと、水の味で顧客をつなぎとめるということができません。サーバーを売ってしまえば、顧客が他社の水を取ろうが対抗処置は取れません。しかし、サーバーをただで貸すとか安く貸していれば、顧客が別な水を取ることを躊躇させられると踏んでいます。
但し、日本でレンタルを始めたサーバーは、アメリカ製ではありませんでした。成長著しい韓国製をメーンに、安さを追求するために中国製に手を出す業者もあります。韓国製は、アメリカに輸出されるほどの完成度に達しているものもありますが、まだ日本人が満足するものではありません。また、韓国製と言えども製造メーカーは数百社あると言われ、及第点に達しているのは、その内の数社に過ぎないことを明記しておきます。
あくまで私見ですが、サーバーがメンテナンス(お手入れ)を自分で出来ないというのは、食品を扱う機械としては落第です。構造を簡単なものにして消費者がお手入れできるようにすること、及びお求めやすい価格を実現すれば、電気ポットやコーヒーメーカー同様、サーバーをレンタルする人はいなくなるでしょう。現状レベルのサーバーをレンタルするしかないという状態は、水メーカー及び営業社に想像以上の負加を課しています。その負荷を取り除き、水メーカーが「おいしさ」を追求できる環境を手にすることの重要性を感じます。

4.「届けてくれる」ことだけは、日本でも行われています。

以上ですが、ガロンボトルビジネスの本来の利点が、ほとんど何も活かされていないことが分かります。届けてくれるという点しか提供できていないのが現実です。それでいて、「顧客が伸びない」と嘆きます。そして、「今でさえ儲けがないのだから、安売りは出来ない」と、本来の利点と反対方向へ進もうとします。また、品質に十分な自信が持てないので安売りに走るといった、両極端が目に付きます。
アメリカでは、ガロンボトルのミネラルウォーターは「水道水に代わるもの」という認識があります。そのため「おいしさ」「品数の多さ=選択肢の多さ」「安さ」「利便性」「宅配」等々は当たり前のサービスとなりました。と言うよりも、それらのサービスを向上させ、当たり前に機能させることを通して、膨大な利用者を獲得してきたのです。
日本のガロンボトルビジネスは、その外観だけを真似ているので、本来の利点に気づかずにいます。しかし、利点を反芻すれば、このビジネスは本来合理的な考えの粋(すい)として登場してきたことが分かります。ですから、その持ち味を台無しにしたままのビジネスが展開されている日本では、消費者に受け入れられないのは当然?とも言えるのです。
「おいしい天然水を、安く、便利に供給する」、たったそれだけのことが、日本ではなかなか形になりません。しかし、おいしい天然水は豊富にあって、それを精密濾過すればおいしさは実現できます。そして、それを近場の都市に宅配すれば安く供給できます。最後の便利にという要素は、宅配とサーバーが担うことができる部分で、それはこのビジネスの特色として、まだ不完全ではあるけれど最初から備わっています。製造拠点・販売拠点・配送エリヤをどれほどの近さに求めるか?は、消費地の兼ね合いを含め、今後、このビジネスに関わる人たちのバランス感覚が最も問われる点となるでしょう。

いずれにせよ、「おいしさ」が第一の課題です。「安さ」だけが得られても、それが粗悪品というイメージを払拭できないならば、逆効果に陥ります。その意味で、業界の大勢が揃って「おいしさ」の重要性を理解し、その上で、「安く、便利に供給する」ことに踏み込んでいけるようでない限り、この袋小路から抜け出す手立てはないのかもしれません。気構えとして、「水道水に取って代わる」という意識を持っているのか?この問いをすべての同業者に向けてみたい気がします。
但し、いきなりそれを求めても、現状のようにRO各社が力を持っていたり、多くの企業がバナジウム水に集中している状況では、実効性はありません。おいしい天然水の地で、小規模であれ、本来の利点を活かそうと考える人達が登場してくることを期待します。宅配を絶対条件とするガロンボトルビジネスは、小回りを売りとする地域密着型ビジネスです。そのため、大手がこのビジネスに参入してくることはありません。同様に全国展開を目論む中企業の取り組みも、どこかで破綻を来たしてしまうでしょう。「天然水道」を標榜する地元企業が力を貯めノウハウを確立した暁には、RO水もバナジウム水も、「おいしさ」「価格」「品質」「サービス」のどれをとっても競争力を持てない状態に陥ってしまうからです。また、その時点でガロンボトルのミネラルウォーターは、ペットボトルのミネラルウォーターと比較しても、圧倒的な競争力を得ていることでしょう。生活の中核に据えられる水が、「おいしさ」と「安さ」と「便利さ」をまとえば、ペットボトルの大きさでは足りなくなってしまうからです。


【洗浄充填機】

弊社で独自開発した洗浄充填機を使用し始めてから、1年5ヶ月が経過しました。正直なところ、当初は開発に伴う問題が続出しました。全く新しい発想を形にしたわけで、それを司る駆動部にしろ部品にしろ、国産品を組み込みました。それらが、耐久性を含め自分たちが想定したとおりに動いてくれるかどうか?は、結局動かしてみなければ分かりません。それが、新しくものを作るということの面白さであると同時に怖さでもあります。
しかし、おかげ様で、私たちは今とても使い心地の良い機械を手にしています。機械単体だけではなく、それを使って実際の製造をする場合、工場のレイアウトや作業員の動線やラック等による作業性の向上を考慮しなければなりません。3ガロンボトルと言えども、大きくて重たいものです。それを一日何百本と扱うことになるのですから、作業性が悪いとたいへんな苦労を背負い込むことになります。その点が、ミネラルウォーター製造会社が製造機械を作ることの強みです。製造全体の作業性をよくしたい、自分たちの感じる難点は無くしたいと願い、それを形に出来るからです。
開発に伴う当初の問題は、自分たちで使用することにより程なく解決をみました。使ってみれば、症状が出ます。設計思想がしっかりしていれば、その症状の修正は容易いことです。そして、手探り故の不安部分が解消されれば、期待した通りの作業性を実感するに至ります。今までのように、「壊れたらどうしよう」という不安はありません。部品はほとんど全てが日本製で、汎用性のあるものを選んでいます。駆体や加工は、技術力を持つ地元の企業にお願いしました。設計段階で、できるだけ壊れにくく、メンテナンスフリーであることを目指し、構造は単純であることを旨としました。そして、設計者も製造者も身近に居るとなれば、恐いものはありません。

弊社は、既に2台の洗浄充填機を納入しています。1台は富山、もう1台は群馬の桐生で、共に加熱処理をしたミネラルウォーターを瓶詰めにする工場に納入しました。ミネラルウォーターの製造方法には、弊社のように精密濾過を施す所と加熱処理を施す所に大別されます。それ以外には、紫外線殺菌及びオゾン殺菌などが上げられます。日本の場合、加熱処理しか認められない期間が長かったため、製造水は加熱処理水が圧倒的に多いのですが、ハウス食品の「六甲のおいしい水」に始まり、サントリーの「天然水」に至るように、ペットボトルのミネラルウォーターの主流は、精密濾過に移りつつあります。おいしさを追求すると、質の高い源水を探し、それを活すことのできる精密濾過に辿り着きます。
弊社では、製造方法として精密濾過を取り入れてきたため、洗浄充填機の仕様もそれに合わせました。そのため、加熱処理水とのマッチングにおいて不都合が出てきてしまいました。加熱処理の場合、製造水はサニタリー配管で直接充填口につなぎます。製造水温の関係から、その間にフィルターを噛ませることができないため、サニタリー配管内にサニタリー仕様の流量計・及び電磁弁を据える必要性が生じます。サニタリー配管とは、ライン内に細菌の留まる凹凸がないように研磨したステンレスの配管で、製造前及び製造後に蒸気または熱水で殺菌します。また、分解洗浄殺菌ができるように、クランプと呼ばれるバンドで結合・分解が容易に行える構造にできています。そのために、配管は高価で、付随する部品も高価です。流量計や電磁弁もサニタリー仕様のものは同様に高価ですが、現状加熱処理を施す所が多い以上、洗浄充填機もそれに対応する必要があります。ただし、精密濾過バージョンと加熱処理バージョンの2通りがあれば、紫外線殺菌にもオゾン殺菌にもRO処理水にも対応が利きます。そこで、加熱処理用の洗浄充填機を作ったことで、あらゆる製造に対応できるものが出来上がったことになりました。

洗浄充填機については、たくさんの問い合わせをいただきます。そして、当然と言えば、当然なことですが、実に多くの工場でボトルを手洗いしている実情が浮かび上がってきました。洗浄充填機はアメリカ製が幅を利かせていますが、輸入代理店が存在していたわけではありませんでした。そこで、今までは独自に輸入して、独自にメンテナンス体制を築くしか方法はありませんでした。アメリカのUAT(ユニバーサル・アクア・テクノロジー)が、その隙間を埋めるために、当初個人に輸入代理店の役割を託しましたが、うまく行かずに頓挫してしまいました。その後、S社が後を継ぎましたが、アメリカ製のコンパクト洗浄充填機は、オゾン殺菌を前提にしています。洗浄殺菌能力は、オゾン殺菌で補完することを想定しているため、その分だけ弱いのが実情です。全自動と銘打たれた機械はコンピューターによって制御されているため、ブラックボックスを含んでいます。部品もアメリカ製のため、故障した場合の対処は容易ではありません。対応策としてメキシコ人技術者が日本に常駐して、西日本にある会社がメンテナンス体制を敷いていますが、万全とは言い難いようです。そのような事情もあって、日本での洗浄充填機の普及は遅れを取ってきました。


ミネラルウォーターは食品ですから、まずは美味しくなくてはなりません。私たちは、洗浄充填機を開発し、製造方法についても、弊社同様のものであれば、進んでお教えしたいと考えています。それは洗浄充填機というミネラルウォーターの品質と直結するものを手にしていただくと同時に、消費者がミネラルウォーターに求めるものをご理解いただくためです。アメリカで多くの利用者を魅了しているガロンボトルのミネラルウォーターは、しっかりとした利点を持ち合わせています。その利点を理解し日本ナイズさせていくこと、それが私たちに課せられた使命だと考えています。


【サーバー】

このビジネスにおいて、サーバーの存在はたいへん大きいなものです。天然水をいつでも飲めるという利便性は、紅茶や日本茶を飲む時に実感できます。また、夜中に喉の渇きで目覚めた時など、こんなに便利なものはないと実感します。
しかし、このサーバーの持つ完成度に私は疑義を感じてなりません。まず、なぜサーバーは家電として売られていないのか?という点が最も気になります。このサーバーは、アクアクララでもダイオーズでも、岩谷産業でも顧客にレンタルで使っていただくようになっています。家庭の中で、水道水に代わる物として、その地位を固めつつあるガロンボトル入りのミネラルウォーターのサーバーが、何故レンタルされるのでしょう。
例えばの話ですが、家電メーカーが商品を作ると、使い勝手のよい商品をメンテナンスフリーを前提に作り上げます。そして、ごく当たり前なこととして、お手入れは購入者ができるような商品を作ります。サーバーは構造的にも難しいものではないし、家電メーカーが作れば廉価でデザイン的にも優れたものができるはずです。そういうものができたと仮定したら、誰もそれをレンタルしようなどとは考えないでしょう。お手入れは、購入者がポットやコーヒーメーカーと同じような要領で行います。

実は、サーバーはもう一つ重大な問題を抱えています。それは、現在のサーバーが、冷却のためにコンプレッサーを使用しているという点です。コンプレッサーには代替フロンが使われていますが、漏れると強烈な温室効果ガスとなります。韓国製のサーバーが安さにおいてアメリカ製を駆逐し、それを追うようにして粗悪な中国製が出回り始めています。安さに釣られて、ガロンボトルビジネスを始めようとする人や企業が「安いサーバーで儲けよう」とします。しかし、輸入したはいいけれど、使い物にならずにコンテナごと廃棄するということが後を絶ちません。それらのサーバーのフロンガスが、きちんと回収されている保証などあるでしょうか?また、家電でないサーバーが寿命を迎える時、一体誰がフロンガスの回収に責任を持つのかといったことも明確ではありません。弊社提携の(株)北栄では、廃棄のための費用を水メーカーに請求し、フロンガス回収業者に託します。しかし、他の会社がどの様な処置をしているかは知るよしもありません。

そこで、弊社では、以下のようなコンセプトでサーバーの開発を始めようと考えています。

1.コンプレッサーを使用しない
2.お手入れを消費者ができるように、構造を簡略化する
3.家電メーカーに製造依頼することを目指した開発を進める

科学技術の進歩につれて、水は目に見える汚染に晒されてきましたが、その水を安心・安全・便利に手に入れるということのために、私たちは、大気を汚染するという堂々巡りに入っています。水は環境と密接な関わりを持ち、その利用者の少なからずの人々が環境問題を憂いています。しかし、それを売る側の意識は「儲けたい」という一心のように見えます。この販売者と消費者のミスマッチの解消こそが、この業界の最大の課題だと弊社は考えています。そこで、現状のサーバーのフロン及び代替フロンガスの回収方法を明確にすることと、脱コンプレッサー方式のサーバーの開発は、必要不可避と考えています。
ペルチェという方式があり、一部冷蔵庫やショーケースの冷却に実績を積みつつあります。この方式は電気的な冷却のため、フロンガス等の冷媒を必要としません。電気代も安くつきます。その方式を取り入れて、お手入れを簡単にできる設計を心がけます。今の時点で、家電メーカーに話を持ちかけても、うまくこちらの考えは伝わらないだろうと考えています。サーバーを提供してきた私たちが、改良点を定かにして試作機に織り込む必要があります。その上で、家電メーカーの持つノウハウに後を託すという段取りを考えています。計画はまだ初期段階で、順調に行っても2〜3年はゆうにかかるプロジェクトです。しかし、いくら時間はかかろうとも、弊社は、ガロンボトルビジネスを堅実に推進させようと考える人達と連携しながら、このプロジェクトを完成に導きたいと考えています。


【2008年に向けて】

2007年も後残すところ1ヶ月を切りました。そこで、少し早いかも知れませんが、今年の総括をしてみることにします。
9月以降、洗浄充填機に対する問い合わせや工場見学は、皆さんの関心の高さを反映して盛況を極めています。既に水事業を始めている人や企業にとっては、夏の最盛期が過ぎると翌年に向けての準備が始まります。工場の稼働がピークを過ぎると、今年の製造を振り返り、思いは来年の営業や製造体制に移るのが常です。そこで、既存の水メーカーさんからの見学希望もありました。また、新規に始めようとする方々の見学も増えました。有り難いことに、「ガロンボトルビジネス」をお読みいただき、その勢いで弊社を訪ねていただくケースが多くなってきました。

多くの方々とお話しをして、ポイントと思えたことをざっくばらんにお話しをします。
弊社の洗浄充填機と精密濾過プラントの一式は、設置工事を含めて約1千万円かかります。工場の建物、ラック等の設備、サーバーやボトルの購入なども合わせると別途1千万円かかります。つまり、全くの新規参入でも2千万円の資金があれば、ガロンボトルビジネスを始めることができます。その投資額は、新築の家の購入費と比べられる数字ですし、飲食店の経営と比較しても、決して多いものではありません。その金額で、先発の企業が四苦八苦している1万本の売上を超える、1万6千本の製造が可能な工場設備を手にすることができます。勿論、本当に問題なのは、製造本数ではなく売上本数です。但し、設備にかけるお金をセーブできれば、販売に関しての選択肢も増えます。自分たちで製造から販売までの全てをやり切らなくても、販売の得意な人達とタッグを組む道もその一つです。実際に、弊社にも委託製造の話はよく来ます。その方達が、思い込みや皮算用に振り回されることなく実利を上げられれば、製造と販売はよい関係を築くことができます。製造も販売も得意という人は稀です。また、両者を兼ねるとなると、資金的な面の負担は当然ながら増えます。そこで、製造と販売を分け、各々が得意分野で十分な能力を発揮すると、どういう展開が見込めるか?少し具体的にお話ししてみましょう。

先発企業の代表選手のA社が提案したプラントは、関連商品の買上も含まれていましたが、一億円でした。彼等のシミュレーションでは、プラントの製造本数は1万8千本で、必要な資金は月額1,486,000円のパッケージリースとされていました。弊社プラントの場合、5分の1の資金ですみますから、単純計算でリースした場合の月額は297,200円となります。両プラントを比べた場合の製造本数は、僅かに2千本の違いしかありません。その上、洗浄殺菌能力については、弊社の物の方が格段に優れていることを、当のA社も認めています。
次に、上記リース金額を売上から支払っていくためには、どの程度の本数を売り上げなければならないか?ということを探ってみましょう。話を分かり易くするために、まず売上を月間5千本としてみます。月・水・金の週3日を製造日として、1ヶ月の製造回数は13(〜14)回となりますから、1日385本、時間にして4時間20分ほどで月間5千本の製造を賄うことができます。この製造に必要な人員は、2人です。1日7時間630本の製造能力を持つ機械で385本の製造をするわけですから、十分な休み時間を取りながら機械を運転させても余裕でこなせます。製造日の翌日は、製品チェックに当てたとしても、工場の要員は2人居れば十分でしょう。

但し、出来上がった商品をどう売るか?ということで必要な人員は大きく変わります。例えば弊社のように、運送会社を介して全国に宅配をしているところでは、荷造りや伝票発行や電話等による受発注業務に人が必要となります。一方、例えば代理店等に弊社まで荷を取りに来てもらえるようになれば、工場の要員は2人のままでも対応できてしまいます。
今までは、全国に網を張らなければ十分な顧客を得るに到らない状況がありました。しかし、地方都市にもアクアクララ・クリスタルクララ・ハワイウォーター・岩谷産業・ミツウロコ等が進出を果たしています。その上、段ボールや運賃の値上がり等運送会社を利用しての宅配には不利な状況が出てきました。石油等の値上げの勢いは当分収まることがないでしょうから、その分だけ近場での展開には多くの利点が生じてきています。少人数で同等以上の利益を確保しつつ、代理店の人にも利益を得てもらい、末端価格を引き下げることができるという利点です。

弊社の場合は、運送会社に配送を委託しなければならない事情から、多くの余剰人員を雇う必要がありました。そのため、遅ればせながら今年11月から、地産地消への脱皮を図り始めています。確かに、水のよい地での営業にはまだ難しいところがあります。しかし、遠方から運ばれてくるRO水やバナジウム水が、もっと高い価格で売られている現実がある限り、展望が開けないはずがありません。工場の仕切を同じ価格としても、運送会社に配送を託している以上、今より末端価格を下げることはできません。しかし、自社便であれ、代理店配送であれ、運送会社に頼る必要がなくなれば価格を引き下げる合理性を手にできます。伝票が不要になれば、通い箱を末永く使えます。工場が事務的な仕事を省くことができれば、人的資源をすべて製造に振り向けることができ、それはいずれ一段進んだ機械化を促すことになるでしょう。

商売というのは、「飽きない」でやっていけるものではなければなりませんから、問われるのは「将来性」です。ガロンボトルビジネスに於いても、将来に渡って顧客を得ていく必然性はあるか?それが、重要な設問です。その設問に対し、競争に無縁でいられる境地を自らの商品で作り出すこと。それが弊社の目指すところです。
2000万円の資金で、月産1万6千本の製造設備を手にできます。もしも、サーバーの供給を代理店に任せられるなら、工場側はもっと少ない予算で製造に専念できる環境が手にできます。弊社は、今まで何でも自分たちでやってきました。しかし、だからこそですが、工場がミネラルウォーターの製造に専念できる環境の必要性を痛感します。そして、これから始めようとする方々なら、それができるのですから、「そこを出発点に据えるべきだ」というアドバイスを送ります。

最後に、もう一度ミネラルウォーターの必要性を問い直します。殺菌剤入りの水道水を飲み続けることによって、現代病であるアトピーやアレルギー・癌などの疾病を誘発する怖れはないのでしょうか?金魚鉢の金魚を死に至らしめ、お茶の色を変色させてしまうものを食品衛生法に適うという理由だけで、本当に信頼してよいのでしょうか?「食の安全」が声高に叫ばれる時代に、私たちは否応なく自己防衛を迫られています。そこに賞味期限よりも遙かに本質的で恐ろしい問題が、潜んでいることはないのでしょうか?水道水の危険性は、改善策や代替物を伴わない限り、公にはできません。代わりになるものがないのに騒ぎ出してしまうと、パニックを作り出してしまうからです。しかし、本当に「食の安全」を唱えるなら、毎日必ず口にするものを度外視できるはずはありません。
殺菌剤の入っていない「おいしい天然水」を、求める方々に供給する。それは、口にするものすべてを賄える量であり、心おきなく使えるだけの価格でなければならないと弊社は考えます。勿論皆さんが、同じように考える必要はありません。但し、上記の事柄が、これからの消費者動向を大きく左右していくことは、間違いないことです。


完  (2007年12月3日)


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